2022/10/14
HI-6とは、ロボット学者 石黒浩氏(大阪大学教授)の遠隔操作型アンドロイドです。 人間の存在感を研究する目的と、石黒浩の代わりに遠隔地で働くという目的で、ATRと大阪大学において開発されました。 KiQは、所作を研究するとともに、今回HI-6の所作のデザインをしました。具体的には、石黒氏らが開発したHI-6所作を与えることによって、アンドロイドのモデルとなった本人以上の豊かな表現能力を、HI-6に持たせています。 KiQはこれ以外にも、IKEBANA VR EXPERIENCEにおける、いけばなの所作や、Pureland altARなど仏教による法話の所作をテーマに、所作による、いけばなや法話の解釈の再変換を行なってきています。今回は、アンドロイドに所作を与えることにより、その存在感をより際だったものにしています。 これまで研究者たちが所作のデザインは大切だと理解していても、それを実装することができずにいました。また、アンドロイドはこれまで演劇にも用いられてきましたが、演劇は日常の動きや対話を再現したものであり、表現力豊かな所作を表現しているものではありませんでした。 表現力豊かな所作は、日常的に誰もが振る舞えるものではなく、スキルを持つ者のみが振舞えるものです。今回はそうした表現力豊かな所作をアンドロイドに実装しました。 アンドロイドはハードウェアの制約によって、人と全く同様に動けるわけではありません。そのため人間の所作をそのままコピーすることはできません。アンドロイド用の所作として、デザインし直す必要があります。 今回KiQは、動きの美しさのポイントとなっているエッセンスを抽出し、アンドロイドのハードウェアで可能な所作をデザインしました。 所作はコミュニケーションの重要な要素であり、音声との同期も非常に重要です。アンドロイドが話しているとき・聞いているときの所作の実装では、音声に合わせた動きのチューニングを行い、より洗練された所作を実現しています。 所作とは人と人が心を通じ合わせるための、心を持った動きのことです。 茶道や歌舞伎などの伝統文化でも所作は表現されてきましたが、KiQが定義し創造する所作は、現代の人間たちがより人間らしく振る舞うための、ニュータイプな所作です。KiQは、そのような所作と創造的な活動を組み合わせながら、人間らしさを再定義しようとしています。 KiQの定義する所作に関して、アメリカのワシントン大学教授で心理学者のピーター・カーン氏は、次のように述べています。「トレーニングしていなくても、人間は誰しも、自然と調和しながら振る舞うような所作を持ち合わせている。それを洗練していけばいい。」また、一方で、大阪大学教授の石黒氏はKiQとのコラボレーションで開発したHI-6の所作を見て、次のように述べました。「HI-6は、普段の僕では到底振る舞えない所作を持っている。これからの講演は全てHI-6に任せたいという気分になった。」 Shosa Program :境くりま、船山智(ATR(国際電気通信基礎技術研究所) 港隆史(理化学研究所、ATR)、石黒浩(大阪大学 、ATR)、菊地あかね Shosa Design:菊地あかね Camera: 宮原夢画 Movie Edit: Imuze Direction: 菊地あかね+KiQ