ロボットと考える未来のコミュニケーション体験『Future Dialogue』を終えて得たこととは

ロボットと考える未来のコミュニケーション体験『Future Dialogue』を終えて得たこととは

「今回の作品では、ロボットに共同作業者として活躍してもらいました。このロボットの在り方は新しかったねと、一緒に作品を創ってきた石黒先生とも話していたところです。」と、菊地は今回のインスタレーション作品「Future Dialog」を振り返ります。

ロボットはこれまで、人間の代わりを務める道具として使われるのが主でした。「人間にはない完璧さがロボットの良さだし、ロボットならではの表現力がある」と今作では、人間との“話し相手”を務めました。

菊地がテーマとしている「所作」は、いつも、どこにでも存在するのに、多くの人は意識することなく暮らしています。所作を使った“対話”を体験をしてもらうため、言葉を話さないロボットと一対一で向き合う作品に。心が通った度合いを、光や音で表現して見える化しました。

長い期間かけて準備をしてきた作品の公開初日、人々が体験する様子を見てどのような感想をもったのか、想いを聞きました。

ー初日は、メディア関係の方を中心に『Future Dialog』を体験されました。皆さんの反応はどうでしたか。

菊地:人によって反応がまったく違っていたのが面白かったです。

ロボット自体については「表情豊か」「リアル」という反応が一番多かったです。表情を変えながら、だいぶ滑らかに振る舞うようになっているので、それぞれの方がイメージしている人型のロボットよりも、人間らしいと感じてくださったのかなと思います。

体験については、メディア関係の方からは「難しい」という感想が一番多かったです。一般の方向けに情報を伝えるお仕事をしている方は、言葉を使わない非言語の体験を、言葉にして伝えなければならないので、そういう感想が多かったのかなと思っています。研究段階でも難易度をどうするかはかなり悩んだのですが、我々の研究として、みんなに問いを与えたいという思いがあったので、最終的に今の形に落ち着きました。

他に、海外のお客様も多くいらっしゃいました。イギリスのアート系の学校の人たちは「着目点が日本らしい」「伝統芸能の文脈では表現されてきたけれど、現代の新しいコミュニケーションスタイルとして打ち出しているのは新しいね」という意見をいただきました。

ー英語圏の人たちはコミュニケーションでジェスチャーやボディランゲージを日常的に使いますが、所作は別物と映るのですね。

菊地:英語ってかなりダイレクトなコミュニケーションスタイルで、言葉自体を信じる人が多いとされているんですよね。「コンテクストを変えて、言葉をなすくだけでもこんなに感じることが違うんだね」と驚きの声もありました。

ロボットと対面したときの緊迫感や、体験を通じて存在感や幸福感があったという人もいました。ヨーロッパの方は、日本の歴史や伝統芸能にもかなり興味をもっています。「言葉がないのに情緒を醸し出すところは、日本に古くから続いている歴史があるものと共通点があるよね」と言っていたのは興味深かったです。

ー海外の方ならではの視点ですね。他はいかがですか。

菊地:中にはお子さんもいて、体験した一番小さい子は3歳でした。ガイドに入って「ロボットの真似をして同じ動きをしてみてね」と伝えると、何をすればよいかが分かりやすかったようです。楽しそうでした。真似をするなら子どもたちにもできたけれど、「じゃあ自由に動いてみて」と言うと創造力が必要なので、子どもたちが体験するには難しそうだと感じました。

国籍・年齢に合わせた体験にするともっと多くの人に届けられるので、私たちもアップデートを考えていきたいなと話しています。

ー『Future Dialog』というタイトルをつけたように、未来の対話の可能性を提示したいという意図も込めていましたよね。新しいコミュニケーションとして、皆さんはどう捉えたのでしょう。

菊地:ロボットと2人きりであの部屋で過ごしてみて、ロボットへの印象は変わったという方は多かったです。始めは「怖い」「不思議」「機械的で無機質」などの印象をもったようですが、体験後には「優しさや温かさを感じた」「距離が縮まった気がする」というように変化したようです。何より、今回一番のねらいとしていた「心が通じた」という声が聞けたのはうれしい事でした。体験した皆さんが得られた感覚ではありませんが、これからの日常生活に戻って、何かのきっかけで「あの会話ってすごく特別だったな」と思い出すなどしてもらえたら繋がっていくんじゃないかと思っています。

ー今回のインスタレーションは今後、どのように展開していく予定でしょう。

菊地:ロボットは今は感情がありませんが、遠くない将来ロボット自身が感情をもって感想を言えるようになるなどしたらインタラクションも変わっていきます。また、ロボットではなくアニメーションやCGアバターのようなものを使って同様の体験をつくるのもいいかもしれません。

また、心が通じ合っている度合いを視覚化する仕組みは、今後オンラインの会議などに指標として導入したら、オンラインでの伝わりにくさを軽減して、よりよい話し合いができるようになりそうですよね。

実際にいろいろな方に体験していただいて世界中の人に届けたいという想いが出てきたので、これ自体をアップデートしたり、別の形に変えたりしていきたいです。