次世代をリードする、エンパシーデザインの可能性【前編】
変化が早く、大きい現代において、デザインを取り巻く環境も次々に変化していきます。そんな中でデザイナーは、「独自性」を維持しつつ、従来のデザインに留まらない、「新しい時代に必要なデザイン」に適応していくことが必要となります。そんな中で体得すべきは、「エンパシーデザイン」だと私達KiQは考えています。「エンパシー」とは、他者の感情や立場を理解し、共感することを指します。KiQでは、日本に古くから存在している「所作」の考え方に基づくクリエイティブを行っています。
デザイン業界の動向

現在、デザイナーのニーズは高まっています。デザインパートナーに関するある調査では、83%の企業が社外パートナーに依頼したことがあると回答しています。以前は一般の方からは距離のある存在だったデザイナーという職業がポピュラーになりつつあります。
同時に、デザインコンサルティング会社・IDEO発の一般の方向けのデザインの考え方・デザイン思考が普遍化しました。世界に広まったにも関わらず、2023年末にはIDEO全社の従業員のうち25%を解雇、ミュンヘンと東京オフィスは閉鎖予定とのニュースも流れてきました。COVID-19によるパンデミックで不景気となり、各社がデザインにかけられる予算が削減していることが原因でしょう。また、デザイン思考自体が働かなくなっていることも原因の一つだと考えます。デザイン思考は、選択肢の拡大やユーザー企業内の取り組みを促進しました。しかし、それ単独では競争優位性の確率が難しいものなのです。
AI技術の目覚ましい発展で、デザインやデザイナーの立場も大きく変化しています。クリエイティブな側面でAIができることが増え、デザイン業務の一部を任せられるまでになっています。デザイナーは、これまで作業に割いてきた時間を目標に直結する業務に充てることが可能になっています。このような状況下でデザイナーには、プロダクト開発の実績がより求められる時代となっています。独自性を探求し、発揮する重要性は増す一方です。
こんな状況の中で、我々は最終の段階だけではなく「過程」にも着目をしています。
KiQの独自性とは

新しい時代に求められるデザインに適用していく必要がある中で、KiQの独自性として打ち出しているのが「所作」の考え方に基づくエンパシーデザインです。所作のデザインも請け負う代表・菊地が、ニューヨークへの留学経験後、日本に戻り、和の文化を学ぶ中で見つけたものが「所作」でした。
独自性のあるクリエイティブな提案を生み出すためには、お客様や他の職種とのコラボレーションが欠かせません。その中で、「所作」の考え方は、エンパシーデザインにおいて特に重要な役割を果たしています。所作は、自己表現力、理解力、調和力の3要素から成り立っており、これらのバランスが取れることで、より深い洞察や意味のある提案が可能となります。
自己表現力(自己を表現する力)
自分自身のアイデンティティや考えをクリエイティブな形で表現することは、クリエイターとしての存在感を築く上でも重要です。お客さんや他のクリエイターとの交流の中で、自分自身を的確に伝え、独自の視点やアプローチを示すことが、新しいアイデアやプロジェクトの発展につながります。
理解力(思いを受け止める力)
デザインを行う際は、相手の立場や感情、ニーズを理解し、受け入れることが不可欠です。他者の思いを受け止め、共感的に話を聞くことができれば、折り合いがつかない場面でも問題の解決方法を見つけ出すことができます。相手の視点に立って物事を捉えることで、関係が深まり、より効果的な提案が可能になります。
調和力(相手と調和する力)
クリエイティブなプロセスは、お客様はもちろん、様々な人とのコラボレーションの中で形成されるものです。クリエイターは異なる職業やバックグラウンドを持つ人々と円滑に連携する必要があります。調和力があれば、異なるアイデアや視点を取り入れながら一体感を保ち、プロジェクトを成功に導くことができます。
これからのUIUXデザイナーやアートディレクターに求められるのは、単なる技術やスキルだけではありません。「所作」の3要素をバランスよく発揮し、デザイナー自身の人間性を活かして他者と共創するクリエイティブが、エンパシーデザインです。
先日、東京デザインプレックス研究所の学生さん向けにエンパシーデザインに関する講演を行いました。その中で「自己表現する」「理解する」における人間らしさとはどんなものなのかを実感してもらえたらと、問いに対する自分とChatGPTの答えを比較し、AIとの違いを考えるワークショップを取り入れました。参加した学生さんからは、下記のような感想をいただいています。
・自分の言葉とAIの言葉を比較してみて、人間が無意識に汲み取っている細かな所作や情緒の部分に対する対応についての、まだAIにはない部分かなと思いました。
・クライアントからの問いを受けたとき、AIと異なり様々な感情を持って生きる人間が考えるなかに、クライアントなど人間の心に届く、心を動かす答えも多くありそうな気がしました。
・AIに取って代わられる部分が増えてきている不安がありましたが、まだ人間らしさゆえにできるコミュニケーションがあるのだと安心したのと、そこの感性を磨いていきたいと感じました。
・菊地さんの会社のような、相手(クライアント)へのヒアリング・寄り添うことを大切にしている会社って良いなと思い、非常に興味深かったです。
後編では実例とあわせて紹介していきます。